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スピンアイスDy2Ti2O7におけるカゴメアイス状態のMuSRによる研究
(東大物性研 広井助教授との共同研究)
スピンアイスDy2Ti2O7におけるカゴメアイス状態のMuSRによる研究/図1

本研究の対象であるDy2Ti2O7はパイロクロア化合物と呼ばれる物質群に属し,先の研究紹介でも登場したCd2Re2O7と同じ結晶構造をとることが知られています。(図1参照)この結晶構造の特徴は、磁気スピンの正四面体が頂点を共有しつつ3次元ネットワークを構成するため,構造的な磁気フラストレーションを有することです。この磁気フラストレーションにともなう新しい現象がパイロクロア化合物では次々と発見されており,現在、盛んに研究されています。スピンアイス状態もそのような新たに発見された現象のひとつです[1.2]。スピンアイスとはパイロクロア格子を構成するイジング型強磁性スピンの極低温下に見られる巨視的に縮退した状態のことで,水の結晶(すなわち氷)における水素位置の無秩序状態についての理論モデルによって同等に扱うことが出来るため、このような名前で呼ばれています。
最近、このスピンアイス状態において[111]という特徴的な結晶軸方向に磁場を印加した場合,巨視的に縮退した状態の新たな出現が九工大の松平らおよび京大の東中らの実験により明らかにされ,カゴメアイス状態と名付けられました[3,4,5]。(図2参照)そこで我々のグループではミクロな視点からこのカゴメアイス状態のスピンの様子を明らかにするため,縦磁場µSR測定を行いました。図3に示すのが、これまでの実験で得られたミュオンスピン緩和率の磁場変化です。観測されたµSR信号の大きさは約4%ほどで、これは通常の測定の1/5くらいの大きさです。このことから試料中に静止したミュオンの大半はDyの大きな磁気モーメントを感じて瞬時に緩和していると考えられます。また緩和率は約1Tの磁場で折れ曲がりを示し,さらに高い磁場を印加してもほとんど緩和率が変化しない磁場領域が観測されました。緩和率が磁場によって変化しないということは、ミュオンスピンが著しく速い磁気ゆらぎを感じていることを示唆しています。つまりカゴメアイス状態とその近傍では、巨視的には縮退した状態ですが,ミクロには磁気ゆらぎが存在していることを明らかにした結果といえるでしょう。現在、この磁気ゆらぎの大きさを定量的に説明するため,詳細な解析を行っているところです。

スピンアイスDy2Ti2O7におけるカゴメアイス状態のMuSRによる研究/図2 スピンアイスDy2Ti2O7におけるカゴメアイス状態のMuSRによる研究/図3

[1] A. P. Ramirez et al., Nature 399, 333 (1999).
[2] S. T. Bramwell and M. J. P. Gingras, Science 294, 1495 (2001).
[3] K. Matsuhira et al., J. Phys. : Condens. Matter 14, L559 (2002) .
[4] R. Higashinaka, H. Fukazawa and Y. Maeno, unpublished.
[5] Z. Hiroi et al., J. Phys. Soc. Jpn. 72, 411 (2003) .
[6] 幸田章宏、大石一城、髭本亘、門野良典、松平和之、高木精志、広井善二、榊原俊郎、大平聖子:日本物理学会第58回年次大会 (2003) 28aPS-65

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